子どもの貧困の原因とは?できることは何?支援現場を経験して見えてきたこと

コーヒーブレイク
画像出典:photoAC

最近はテレビCMやネット広告といったメディアで、
子どもの貧困について目にする機会が増えてきました。

生活困窮家庭の子どもの実態を述べて、
その子や家庭を支援するために
寄付を募るという内容が多いです。

普段生活していると、そういう家庭や子どもの存在に触れない人も多いのではないでしょうか。

子どもの貧困と聞くと、発展途上国のような状態を思い浮かべるかもしれません。
しかし、日本の中の子どもの貧困は少し違います

経済的に不利な家庭でも、スマートフォンは持っています。
服もあります。

では、日本では何が問題になっているのか。
日本の子どもの貧困問題と、筆者が実際に支援をしていた経験から見えてきたことをお伝えします。
特に学校の先生など、教育に関わる人に読んでほしいです。

こどもの貧困とは何か

画像出典:photoAC

子どもの貧困について、子ども支援のNPOなどに資金助成をしてくれている
日本財団の言葉を引用します。

この日本における「子どもの貧困」とは「相対的貧困」のことを指します。
相対的貧困とは、その国の等価可処分所得(世帯の可処分所得を世帯人員の平方根で割って調整した所得)の中央値の半分に満たない世帯のことを指し、子どもの貧困とは相対的貧困にある18歳未満の子どもの存在及び生活状況のことを指します。
こういった子どもたちは、毎日の衣食住に事欠く「絶対的貧困」とは異なりますが、経済的困窮を背景に教育や体験の機会に乏しく、地域や社会から孤立し、様々な面で不利な状況に置かれてしまう傾向にあります。

引用元:「子どもの貧困対策」|日本財団

要約すると、
家庭の収入が日本の真ん中の世帯、さらにその半分にも入らない家庭の子ども
ということになります。

途上国のような衣食住に困る貧困とは違いますが、
平均的な家庭よりは経済的に不利な状態になります。

また、厚労省の調査から以下のことがわかっています。

厚生労働省が発表した「2022年 国民生活基礎調査の概況」によると、日本の子どもの貧困率は11.6%となっています。

引用元:「日本でも増え続ける「子どもの貧困」問題とは?貧困の原因、支援方法は?」|gooddo

日本の子どもは9人に1人が貧困状態」と言われることが多いですが、
この数値が根拠になっています。

子どもの貧困の原因は何か

画像出典:photoAC

先に引用させてもらった「gooddo」の記事によると、

  • 親の収入の問題
  • ひとり親家庭の増加

が挙げられています。

確かに、元の収入が低かったり、
共働きが進んでいる現在で1人からの収入だけなら、
経済的な格差が広がってしまいます。

また、「Save the Children」の記事によると、所得の他にも
「義務教育でも教育費がかかる」「学ぶことにお金がかかる」
ことも挙げています。

支援現場で感じたこと

画像出典:photoAC

以上のように、子どもの貧困には教育・経済格差が大きいことに原因があり、
経済困窮家庭は不利な状態におかれ、それが子どもに連鎖する、
ということがわかりました。

そのために、格差の是正が必要で、支援の手が必要になってきます。
実際にそういった子どもに関わっていてもそれは強く感じます。

ただ、これだけでは核心をついていない気もします。

「教育格差がどれほど貧困の連鎖に影響するのか」
「学習支援をしてそれが解決になるのか」
「生活保護があるじゃないか」
など、疑問に思われる人もいるでしょう。

子どもの貧困を知ってもらうために、教育・経済格差をまず語ることは、
興味をひくためにはいいかもしれませんが、
日本では貧困の解決までイメージはしづらいのも確かです。
(生活保護制度が有用に機能しているかどうかは、ここではおいておきます。)

以下では、筆者が実際に子どもや家庭の支援に関わって感じた、
貧困の連鎖の元になっていそうなことを4つ紹介します。

4つのことに共通して言えるのは
格差よりも何に価値を置いているかが重要なのではないか、ということです。

勉強することの価値

有名大学を卒業して会社員や公務員になった人、
起業して社長になっている人は、
経済的に裕福になる可能性が高いですね。

その人達は、入試なりビジネスで勉強することの価値を感じて、
勉強や試験をクリアすることに時間を費やしてきたはずです。

経済困窮する家庭は保護者が高卒や中退の場合も多いです。
ただ、それはただ学歴がないだけでなく、
学歴や勉強に価値をおいていない人もいます。

そのような家庭の子どもは、親戚が家に来るからといって、入試前の模試をキャンセルするこもあります。
保護者から進路について「公立高校に合格できなければ働くしかない」と言われることもあります。

物の価値

生活保護を始め、行政のセーフティネットを利用できれば、
食べ物を買うことはできます(物や量はあまり選べませんが)。
生活保護も子どもの数に応じて増えます。

問題は、お金を受け取った保護者が
ちゃんと子どものために使えるかどうかです。

ある家庭では、お金をお酒に使ってしまう人もいます。
アクセサリーに使ってしまう人もいます。
中には業者の口車に乗って、スマホを複数契約してしまう人もいます。

自分では賢くお金のやりくりをしているつもりでも、
安い、お得、という言葉にのって無駄遣いしている場合もあります。

見栄えを重視するのは、自己肯定感とつながってくることもあるでしょう。
それと子どもの生活を天秤にかけられるかどうか、そこが鍵になってきます。

健康の価値

アメリカでは、経済的に余裕のない家庭は、バターの代わりにマーガリンを買うと言われています。
マーガリンはバターより脂肪分が多く、不健康になりやすいです。
それでもマーガリンの方が安いのでマーガリンを買ってします。
こうして貧困の人は不健康になり、負のスパイラルに入ってしまいます。

似たようなことが日本の経済困窮現場でもおこっていました。
安いからといってカップ麺を頻繁に主食にする家庭も見受けられました。

安くて量もありますが、成長期の子どもにとって大人以上に健康への影響があります。
今は目に見えなくても、時が経つと体に蓄積された不要物が影響してきます。

クリスマスイベントで、お菓子やちょっとした食べ物など、プレゼントを用意しました。
ゲームの景品として、生徒が好きな物を順番に選ぶ形式にしました。
そこでは、生徒に人気だった物はお餅で、カップ麺は不人気でした。
いつも食べているから、とのことでした。

調べることの価値

もし皆さんが生活に困っていたら、無料で利用できるサービスや
支給対象になる手当や補助金を調べるかもしれません。

ただ、生活困窮にある人は、自分が利用できるサービスがあることを知らない人も多いです。
積極的に紹介しない行政側にも改善点はあるかもしれません。
しかし、自分で調べようとする姿勢は、支援を受ける側としてはあってほしいところです。

セーフティネットがある、
という安心や信頼が欠如していること、公的な支援への諦めが
調べることの意欲を無くさせているのかもしれません。

そうであるなら、どういうサービスを設けるかよりも、
「支えられていいんだ」という自信や信頼をもってもらうことが
まずは必要になってきます。

子どもの貧困に対してできること

画像出典:photoAC

子どもの貧困は行政や専門家だけでは解決ができません。
彼らを支える地域の小さな取り組みや行動から、解決の一歩が始まります。

子どもの貧困問題の解決に向けて、教育系のNPO法人が事業として取り組んでいます。
記事にしていますので、そちらもご覧ください。

では、普段から私たちにはどういったことができるのか?
あまり関わりのない人もできることはあるのか?

いくつか例を挙げていきます。
少しでも関心をもっていただけると嬉しいです。

現状を知ること

まずは日本の子どもの貧困を知ってもらうこと。
これだけでも偏見が減ったり、困窮家庭への理解が進んでいきます。

価値観の問題を挙げましたが、
家族の面倒をみなくてはいけないヤングケアラーの子達は、
自身ではどうしようもないことが多いです。

そういう子がいるとわかってもらえれば、いざという時優しい対応をしていただけると思います。

成功例を示す、ロールモデルになる

先に挙げたように、私は何に価値を置くか、それを学ぶことが長期的に見て、
子どもの貧困の解決につながると思っています。

何に時間とお金を使えばいいか、
それでどういう結果になったのか。
それを目に見える形で示せれば
子ども達もその価値を実感できます。

大人とのつながりが保護者しかいない場合、
その価値を理解しにくいです。

身近に保護者とは違う大人がいれば、そこから学べることも多いです。

学習支援

NPOや一般社団法人が事業として行うことの多い、学習支援。
これも一定の効果はあると、支援現場にいて感じています。

学習の機会の保障もありますが、
子ども達が学習すること、勉強への価値を感じてくれているところが大きいと思います。

学習支援については別記事で触れていますので、
合わせてご覧ください。

フードドライブへの寄付

フードドライブ(フードパントリー)の活動も、
最近メディアなどで取り上げられるようになりました。

食材の寄付を集めて、
困窮家庭に渡す取り組みです。

缶詰など日持ちするものが多いですが、
すぐに腐らない野菜なども寄付を受けつけている場所もあります。

食は子どもの成長の基礎なので、
ここをおろそかにしない支援があってほしいです。

まとめ|身につけたい生きる力

画像出典:photoAC

文部科学省が児童生徒に身につけさせたいスキルとして、
「生きる力」を掲げています。

激しい変化の社会を生き抜くための「知・心・体」の力、と言っていますが、
その前に、それらが価値あるものだと認識できる場が必要だと思います。

また、ここまで読んでいただいた人の中には、
「結局は親の責任」「行政がやること」と思われた人もいるかもしれません。

しかし、そう言っても何も解決しませんし、
放っておくと、子どもの状況が悪くなっていくことは変わりません。

なので、少しでも子どもがよくなる状況を、
我々がつくっていかなければならないと思っています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました